退職金
退職金で倒産?
A社長は2代目です。A社の業績はこのところ芳しくなく、バブル崩壊後、受注量が減少し、単価も下落というダブルパンチと言える状態。売上高は3年連続して減少しました。前年は営業損益の段階で1000万円の赤字を計上しました。
A社長を悩ませていた問題は退職金でした。A社の退職金規程は先代の社長が作ったものでそのままです。変更したいと思いつつ、先代の頃から働いてくれている社員のことを思うと手をつけられないでここまできました。
A社の規程では、
退職金の金額=退職時の基本給×勤務年数×自己都合退職係数
賃金体系をみてみますと、基本給が賃金の大半を占めていました。仮に基本給が50万円の人が40年勤務の末に定年退職したとするならば、その退職金は2000万円にもなりました。A社の従業員は40人いましたが、その中で45歳以上の者が定年まで勤めると仮定すると、退職金の総額は1億5000万円になります。
A社長は「この退職金問題を考え出すと夜も眠れなくなる」とこぼしていました。
A社はその後、取引先が倒産して不渡り手形をもらい、連鎖倒産しました。新聞にA社長が退職金(賃金)不払いの容疑で書類送検されたという記事が載ったのは、倒産の3ヵ月後のことです。
ここまで最悪の例は少ないかも知れません。しかし、大なり小なり退職金制度に問題を抱えている中小企業が殆どではないかと考えます。“自覚症状”が出る前に、早目に手を打つことが、会社を守るために必要です。
早急に退職金を見直す必要のある会社とは
☆ もう何年も退職金を見直していない
☆ 深く考えずに知り合いの会社をマネして同様に作った
☆ 極端な右肩上がりになっている
☆ 何となく自己都合退職金係数があるが、意味がよく分からない
☆ 基本給に比例した退職金額になっている
☆ 勤続年数が同じだと、部長もヒラも同じ金額
日本最適賃金研究所の新提案
中小企業にぴったりの役職者加算付き勤務年数方式
「単純明快」「過去の功績を反映させられます」
退職金制度の中で最も単純なのは勤務年数方式です。これならば理解できない人はいないでしょう。しかし、単なる勤務年数方式では過去の貢献度を反映できません。そこで勤務年数比例の退職金のうえに役職者加算を上乗せして作ったのが「役職者加算付き勤務年数方式」です。
一般的な退職金制度では、勤続年数に応じて右肩あがりに単純に増えていきます。それが役職者加算付き勤務年数方式打ち止めになっているのが特徴です。
また、役職者はその上に加算があります。課長を務めた者には「課長加算」という上乗せ支給があります。更に部長になりますと「部長加算」もあります。この役職者加算は打ち止めではありませんので、役職者に就けば退職金はずっと右肩上がりになるわけです。
退職金の金額は
「勤務年数ごとに定められた退職金+役職者加算金」と計算します。
問題は、中小企業が事務的な管理を不得手にしていることです。
勤務年数ならばすぐわかるでしょうが、誰がいつどんな役職だったのか、ということは案外わからなくなります。そんな人事記録を整備している中小企業は少ないからです。
このため、この「役職者加算金」はあまり階層を多くしない方が管理上ベターだと思います。部長とか部次長とか課長とか課長補佐とか、加算金の金額を細かく分けますと、管理ができなくなってしまいます。
「課長級」と「部長級」の2つで良いと思います。部次長とか課長補佐とかいう中間職位は切り上げするか、切り下げするのか取り決めをしておけば良いでしょう。
課長と部長ならば、社内にあまり人数がいません。仮に従業員50人の会社ならば数人しかいないものです。この数人のことならば、誰が何歳の時に課長になり部長になったのか、人事記録がなくても経営者の頭の中に入っているはずです。
つまり人事記録を残さなくても運用できるのが特色です。
この制度に良く似たものに「ポイント制退職金制度」がありますが、それとの違いは次の点です。
- ポイント制退職金制度は職能資格制度を作らないといけないが、役職者加算付き勤務年数制度は職能資格制度がなくてもできる
- 職能資格制度は職能等級の在籍年数で管理するが、役職者加算付き勤務年数制度は役職在籍年数で管理する
- ポイント制退職金制度は人事記録を残す必要があるが、役職者加算付き勤務年数制度は人事記録が不要。